セゾンさゆりのブログ 2024.3.20

Sayuri Baird

ベアードビールファンの皆様へ、

私とBryanが縁あって静岡県東部に移住してから今年で27年になります。1997年にアメリカの醸造学校を卒業後、最初の仕事がたまたま沼津市で、既に立ち上がっていたブルワリーの日本人ブルワーの指導をするために派遣されたのがきっかけでした。その時は、生まれたばかりの長女と3人家族。縁もゆかりもない土地でしたが、振り返ってみると、色々な人とのつながりの中で、ここに来た意味があったのだと思うことがたくさんあります。

実は最初のこの仕事は社長さんとビールに対する思想が合わず、わずかの期間で終了してしまったのですが、その後自分たちのブルワリーを立ち上げる際に、沼津を起点にやっていこうと思った理由はいくつかありました。

まず1つ目は:立地的には、ちょうど日本の真ん中くらいに位置し、東京や大阪など日本の大きな商業圏に近く、流通の便が良い。

2つ目は:土地や家屋の価格が比較的安く、コスト面で有利である。

3つ目は:自然環境が豊かで、子供を育てるのに適している。

今でもその時に考えていた理由に間違いはなかったと確信しています。とはいえ、2000年に起業、同年7月に日本一小さなブルワリーパブ(1日の仕込み量僅か30L樽1本!)として沼津フィッシュマーケットタップルームを開店した当初は、非常に苦しい経営状況でした。沼津は製造場所としては最適だったものの、クラフトビールを販売する市場としては、厳しい場所だったのです。しかも定番ビール5種類をすべてハンドポンプでリアルエールとして提供しており、それを初めて経験する方々は「ぬるいビール」「炭酸が抜けているビール」と、口を揃えて言っていました。それでも自分たちのやっていることは間違っていない、品質には妥協はしない、という覚悟を決め、一人一人のお客様にクラフトビールの味わい、奥深さを丁寧に説明していきました。その甲斐あって、クラフトビールの美味しさに開眼したお客様達が口コミで広めてくれ、少しずつファンが増えていきました。24年前と言えば、やっとネット社会が始まったくらいです。そんな中ネットでその噂を聞きつけ、週末には東京や県外からのお客様が訪れるようになり、来店されるお客様の8割を占めるようになってきました。そこで、市場のあるところに展開しなければ、将来がない、と私達は考え、最初の醸造規模拡大(30Lから250L仕込み)を2003年に実行。それを機に、瓶詰を始め、樽と瓶の業務卸も開始。それと同時にホームページやラベルアートも完成させ、ここからブライアンのビールまたはタップのビールとお客様に呼ばれていたビールが「ベアードビール」と認知されるようになってきました。

2002年頃のフィッシュマーケットタップルーム外観

 

その後は、2007年に2度目の規模拡大で1000L仕込設備を追加。それを機にベアードビールの美味しさを徹底した自社管理で提供したい、と直営店の展開を考えるようになり、2008年に中目黒(ピザ)、2009年に原宿(焼き鳥)、2011年に馬車道(スモークBBQ)と、関東を中心に直営店を展開してきました。ビールを造っている、というと必ず「ご主人はドイツ人ですか?」と典型的なマインドセットで聞かれることが多いのですが、その頃はフードに対してもそうでした。ビールと言えばソーセージ、という風に、ドイツ風のビアホールをイメージする方が多かったので、それも打ち破りたかったのです。今では、上記3店舗の他に、高田馬場(串揚げ)、吉祥寺(テクスメクス)にもタップルームを展開し、フードコンセプトを変え、クラフトビールとフードの相性も追及しています。

その後、3度目の醸造規模拡大(6000L仕込み)で伊豆・修善寺へ移転。本社機能とブルワリーを沼津から移転させました。大好きな沼津から離れたくなかったのですが、私達の望むような条件に合う土地が見つけられず、そんな折に縁あって伊豆の菊池市長へご紹介いただき、今この場所にブルワリーを建てることができ、早10年を迎えようとしています。

2014年春 竣工直後のベアードブルワリーガーデン修善寺

 

このように24年の間に、色々なご縁があり、多くのチャレンジをしてきましたが、変わらないこともあります。それは人と人のつながりを大切にすることです。タップルームの大工さんはずっと(皆さんもご存知の)長倉さん。創業時は大工さんとしてだけでなく、奥様と共に、私達の子供達をまるで自分の孫のように可愛がり、お世話をしてくれました。本当に感謝してもしきれません。印象的なラベルを作ってくれている西田栄子さん。彼女ともずーっと一緒に仕事をしているので、今では私達のイメージをすぐに理解、形にしてくれ、毎回素晴らしいアートを創造してくれています。そしてベアードブルーイングの出資者の皆様。5人で始まった合資会社も、24年もの間に今では80名を超え、各成長過程で多大なる応援と励まし、支援を継続してくれています。そしてもちろん、ベアードビールのファンの皆さん。皆さんがベアードビールを飲んで、楽しんで、幸せな笑顔を見せてくれることが、私達の明日への元気の源、エネルギーとなっています。

20141月 竣工直前 ベアードブルーイング社員総出の新年会にて(懐かしい顔がいっぱい!!)

 

5月の最後の週末(2526)は、ベアードブルワリーガーデン修善寺の10周年祭です。多くの皆様とビールを囲み、懐かしい話やこれからのことなど、お話しながら、乾杯できることを、心から楽しみにしています!

ベアードさゆり

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